はばたき海岸での海水浴を終えた俺たちは
新はばたき駅へと向かうバスに揺られていた
は、少し疲れたのか・・・
座席に身体を預け・・・目を閉じていた
「あ〜、腹減った!おい藤井、飯はどこで食うんだ?」
「ショッピングモールの入口にあるファミレスだから、もう少しだってば」
「おっしゃー、飯、飯、肉食うぞ、肉!」
「和馬くん、食べ物は気を使わないと〜ダメだって・・・」
「ああ・・・わかったわかった、肉、野菜、野菜、野菜、肉だろ?」
「そう、和馬くんは、私が言わないと、肉肉肉肉肉になるからぁ」
鈴鹿と紺野のやり取りを聞きながら、俺は窓の外を眺めていた
遠ざかる海岸が・・・、まるで過ぎ行く夏をあらわしているようで
いろいろなことを思い出す
『珪くん』
の口から、初めて聞いた俺の名前
俺が『』そう呼んだからなのか・・・
それとも・・・、全くの無意識なのか・・・
俺は・・・、日に焼けた背中の熱を感じながら・・・
の閉じられた瞼を・・・ぼんやりと見ていた
バスは20分ほどで新はばたき駅について
俺たちは、ショッピングモールの入口にある大きなファミレスへ向かった
幹事の藤井が先頭で店に入り・・・店員に名前を告げる
「いらっしゃいませ」
「スミマセーン、予約してる『姫条』ですけどー」
「はい、姫条さま6名様ですね、お待ちしておりました、こちらへどうぞ」
にこやかな店員に促されて、俺たちはぞろぞろと店内に入ってゆく
「おい、自分、いつから姫条になったんや?」
「別にぃー、深い意味は無いからね!」
姫条が藤井の頭をポンポンと叩いて嬉しそうに笑う
その姿が・・・、本当に自然で・・・
俺は正直・・・羨ましい、そう思った
店の一番奥の、仕切られたスペースに案内された俺たちは
わざとらしくを真ん中に座らせて、それぞれ席についた
メニューを見ながら注文を済ませると、が不思議そうに藤井に聞いた
「ねえ、奈津実ちゃん、わざわざ予約したの?」
「まあ、そう言うこと、もう少し待ってなよ、にもその訳がわかるから」
藤井がそう言っているそばから、店員が「注文の品」を持ってくる
メニューには無い、ノンアルコールのシャンパンが3本テーブルに運ばれて
高校生の俺たちには・・・ちょっと不釣合いなシャンパングラスが置かれた
そして、店内の照明が落とされて・・・店内放送が聞こえてきた
『本日は、ご来店いただきまして誠にありがとうございます
本日、お客様の中にお誕生日の方がいらっしゃいます
お名前は、 さまです
さまのお友達より、バースデーケーキのプレゼントを受け賜りました
どうか、皆様も、17歳になられたさまへ
お祝いの拍手をお願い申し上げます』
「え?!嘘!やっ・・・どうしよう」
店内放送はHappyBirthdayの曲が流れ
ロウソクに火がともされた大きなケーキが運ばれてきて
の目の前に置かれた
「、お誕生日おめでとう!!
ロウソクを吹き消して!」
藤井の声にが頷く
の頬が膨らんで、ふぅ〜っと息がはかれ、ゆらゆらと揺れていた炎が消えてゆく
俺たち男3人は、の動きにあわせて、シャンパンの栓を抜いた
ポンッ!ポンッ!ポンッ!
勢いよく飛び出した栓の音が合図になって・・・俺たちは口々に
「おめでとう!」と繰り返す
それに合わせて、広い店内の隅々から、大きな拍手が沸きあがった
「あ、ありがとう・・・、本当に、もう、どうしよう・・・」
「、お誕生日おめでとう!」
「ちゃん、おめでとう、いい一日になった?」
「、おめでとう、今日溺れなくて良かったな!」
「ちゃん、おめでとうさん、そんな、泣かんでええやんか」
「だって・・・、もう、どうしていいのか、嬉しくって・・・」
感激のあまり、涙を堪えきれないが、愛しくて
俺は・・・、声も出せずにいた
そんな俺の様子に気付いた藤井が、俺の背中をつついてきて
俺は・・・、一日中、言いたかった言葉を初めて口にした
「・・・、誕生日おめでとう」
「あ・・・、葉月くん・・・ありがとう」
「17年前の今日・・・・おまえが生まれた・・・」
「・・・うん」
「The Special Day・・・だな」
「スペシャルデイ・・・・」
「ああ・・・、特別な日」
「特別・・・な日・・・」
「Happy・・・Birthday」
俺の声に合わせて、全員でシャンパングラスを掲げた
煌めくグラスの中の・・・、淡いピンク色の液体が揺れる
の頬を、涙が更に伝う
そして、俺たちは・・・の17歳の誕生日を、心から祝った
ケーキは甘すぎて、俺には少し厳しかったけれど
藤井があれこれと準備したこの日は・・・滞りなく過ぎていった
新はばたき駅で、他のみんなとは別れて・・・俺はを家まで送ってゆく
今日一日のことを思い出して、とりとめもない話をしながら
俺たちはゆっくりと・・歩いた
の家の前まで来て・・・
「今日は本当にありがとう、嬉しかった」
そうが言って・・俺は、ずっと出番を待っていたプレゼントを差し出した

「これ・・・、俺から」
「え・・?」
「みんながいるから・・・渡せなかったから」
「葉月くん、ほんとに貰ってもいいの?」
「ああ・・・・」
「開けてもいい?」
俺が頷くと、は早速包装を解き始めた
丁寧に包まれた・・・小箱の中身は・・・シルバーのブレスレット
「あ・・・、これ・・・」
「・・・ん、おまえの星座・・・しし座だろ?」
「うん・・嬉しい、葉月くんそんなことまで覚えててくれたんだ」
はまた感激して、目頭を潤ませながら・・・ブレスレットを手首につけた
星座のマークを施されたそれは・・・の少し焼けた肌にピッタリだった
「ありがとう・・、大事にするね」
「ん・・・誕生日・・・おめでとう・・・・」
「あ・・・、ありがとう、・・・珪くん」
俺たちは・・・、今度は意識して・・・そう呼び合った
The Special Day・・・
・・・本当におめでとう
そして・・・・サンキュ
今日は、俺にとっても・・・、最高の「特別な日」になったから・・・
END
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